はじめに

金光教豊中南教会長 水野真信

「ローマ帝国衰亡史」(エドワード・ギボン著)に、今でも印象に残っている記述があります。大意は、戦争を繰り返したローマ帝国。悲惨な戦争のあと、もう二度と戦争はしないと平和体制を築くが、50年も経つと当時を知らない世代が台頭(たいとう)し、平和体制の崩れる兆しが現れてくる。

今年は第二次世界大戦が終わって65年になります。 これまで、毎年夏になると、戦没者慰霊祭、平和祈念集会、戦没者の遺骨収集、体験談の紹介が行われてきましたが、世代が変わるにつれて次第に風化していく傾向にあります。それゆえ、他の人が実体験されたことを我がこととして追体験することは難しいことですが、二度と悲惨な戦争を繰り返さないためにも、折りに触れ、せめて知ろうとする努力は必要です。

以前なら、知る努力をしなくても、自然と伝わっていたでしょうが、今の私たちは他人への関心が薄れ、前の世代の経験が親子の間でさえ伝わりにくくなってきているのも事実です。

そこで、前の世代の貴重な体験が次の世代に生かされ、世界人類の助かりとご神願に添えることを願い、金光教豊中南教会開教百年の記念誌として従軍体験記を発行させて頂くことにしました。

ここに掲載する従軍体験記は、在籍信奉者の大澤榮一氏が昭和16年1月、二十歳の時に海軍に入隊し、南方ソロモン諸島での遭難(第2章)、レイテ島沖海戦(第3章)、沖縄特攻(第4章)と、何度も死に直面し、生死の境を彷徨(さまよ)いながらも運よく生還された体験記です。健康に生まれた青年が、戦地での過酷な軍務によって健康な体は損なわれ、人並みに働くことも出来ぬほど傷められました。そういう身にありながらも、著者は平和を願い、後々の人に読んでもらえるよう、几帳面に丁寧な字で書き残されたのです。

(備考)拙紙は非売品で140部のみ発行しました。

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